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声を押さえて会話を再開させる二人。
「ほら、昨日の晩さ、龍~ちゃんがエッチな本を見てたでしょ」
「見ていました……」
ばっちりと月美に見られました。
「でさ、やっぱり龍~ちゃんは、大人の女性が好きなのかなって思ってね……」
姉の件やエロ本のせいで、月美は勘違いしているのだろう。
エロ本を月美に向かって突き出し見せたさい、セクシーなお姉さんが黒のランジェリーなパンティ一枚で、卑猥なポーズを決めているページであった。
龍一は、大人の女性が好きなわけではない。パンツが好きなのだ。
エロ本の女性を見て興奮していたわけでも、年上である姉のパンツに興味を抱いたわけではない。誰のパンツでも良かったのだ。兎に角パンツに燃えるのだ。
その辺を月美は勘違いしている。龍一が年上の下着姿やセクシーパンツに興味を抱いていると思い込んでいるのだろう。
「だからね、先ずは形から入ろうと思ったの」
「形……?」
「でもね、大人っぽい下着がよくわからないから……」
「それで、俺に見立ててもらいたい、と?」
「うん……」
小さく頷いた月美の両肩を龍一が両手で掴むと「まかせろ!」と力強く言った。
突然のことにキョトンとしてしまう月美。
「形から入るのに、下着から入るのは、悪いことじゃないと思うぞ!」
意味不明だが、自信満々に述べていた。
「だ、だよね!」
どもりながらも表情を明るくさせた月美が答えた。
傍から見たら馬鹿丸出しだが、本人たちは自覚の欠片もない。
そして二人は、学校が終わってから素度夢駅前で待ち合わせる約束をして別れた。
二人の心は、それぞれの思惑にクルクルと躍っていた。
片や、好いた殿方とデート気分で買い物に出る歓喜に心躍らせ。そして、誘惑を目指す彼好みの大人のアイテムを手に入れるため。
片や、そうそうないチャンスを有効に生かすために意気込み、禁断の果実が無料で堪能できるパラダイスを目指すため。
幼馴染み二人は、この買い物の約束を、何があっても守る積もりであった。
例え家族の屍を踏み越えてでも、目的地を目指す意気込みだった。
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