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それにここ最近、月美の言動は可笑しい。特にこの三日間は、やたらとドキドキさせる。
下着の買い物に誘ってきたり、部屋に入って来てパンツを見せてくれたりとだ。
お節介な性格で時々世話を焼いてはくれていたが、そこまでストレートな振る舞いはなかった。
「まあ今日は、ちゃんと月美ちゃんの買い物に付き合ってやれよ」
「お前に言われなくても付き合うつもりだ。でも、デートじゃないぞ」
照れ隠しに言う龍一を、卓巳が茶化す。
「あー、はいはい、そうですか、そうですか~」
「なんだよ、その言い方……」
「で、何を買いに行くんだ?」
一瞬のことだが龍一の足が止まった。直ぐに歩き出す。
「え~と……」
言えない――。
パンティーを買いに行くとは言えない。
月美が穿くパンティーを、龍一が選ぶなんて言えない。
その時である。
突風が吹いた。
地を這うような低い風が周囲を駆け抜けたあとに、天へと上っていた。
「「おおっ!」」
龍一と卓巳が声を上げた。他の男子生徒も目を剥く。
前を歩く同じ学校の女子生徒のスカートが、突風に煽られて捲れ上がったのだ。
周囲の女子生徒たちにも、同様のハプニングが発生していた。
二人の前を歩いていた女子生徒が、靡く髪とスカートの裾を咄嗟に押さえた。
「きゃ!?」
しかし後方から見ていた龍一と卓巳の視線をブロックすることまでは不可能だった。秘密の楽園を二人に晒す。
「やだー、もー!」
突風にスカートを弄ばれた女子生徒たちが、小さな悲鳴を上げたあとに文句を口にする。
バッチリとパンツが見えた。
桃色である。
そして、龍一がボソリと言う。
「パンツだよ……」
龍一が述べたのは、月美と買い物に行く品だった。
「ああ、ピンクだったな――」
だが、卓巳は龍一の言葉を誤解して受け止める。目の前に儚く花開いた乙女の秘密だと思ったのだ。
「なんか朝からよ、俺らラッキーだな。良い物を拝めたぜ」
「うん……」
二人は前方を歩く女子生徒の背中に向かって両手を合わせた。頭を垂らして拝む。
「突風の神様有り難う」
「突風の神様って、なんだよ?」
「風神雷神の、風神かな」
「なるほど……。さすがオカルトマニア」
「ギリシャ神話で言うと、風神はアイオロスかな」
「アイオロス……。射手座のゴールドセイント?」
「それは、コスモを感じる人ね」
そのような会話をしながら二人は校門をくぐった。学校に到着する。
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