サマーキャンプと出雲鉱角と地下組織アンダーズ

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「三日月堂。てめーが抱えてる若い衆ぐらい、ちゃんと教育しとけや、ボケ」 そう吐き捨てた青山が踵を返す。振り向く寸前まで三日月堂を睨み付けていた。ただ三日月堂は苦笑いを浮かべるだけだった。 「行くぞ、お前ら」 「へい」 青山が砂浜のほうに歩き出すと、残りの三人も後を追う。 しかし一人が残った。筋肉質の男である。 「おう、花巻。元気だったか」 青山とは異なり気さくな口調だった。元プロレスラーの男である。 少々長い前髪の隙間から無数の額傷が見える強面だったが、溌剌として明るい爽快な男だと感じた。根は悪い人間に見えない。 龍一に回していた腕を外した花巻が、締まりのない会釈で挨拶を返す。 「ちわっす、内野さん。相変わらずスゲー感じのモナカですね」 内野と呼ばれたマッチョマンは鍛えあけられた自分の腹筋を平手で叩いた。ズシリと重い音が鳴る。だが顔は満面の笑みだった。 「お世辞が上手くなったな、花巻よ」 「へへ、どうもッス」 花巻の述べたとおり、内野の腹筋は白いタンクトップの上からでも形がわかるぐらい鍛え上げられていた。まさにモナカアイスのような形に割れている。 ちなみにボディービルダー業界では、最高に鍛えられた極上の腹筋をモナカと呼んで褒め称える。ポーズを決めているビルダーに「ナイス、モナカ!」と掛け声を掛けるのだ。花巻は、それを知っていたのだろう。 花巻と内野は、アメリカのヤンキーのように拳と拳をぶつけて挨拶を交わすと、二人だけで楽しそうに笑って話していた。日常的な会話で盛り上がっているが、卑猥で下品な内容が多かった。
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