京極の“京”って“凶”の間違いじゃね?

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だから、必死で口を固く閉じていたら 唇は離れた。 ホッと一息つくと 「ッあ!?」 いつの間にか 服の中に侵入していた京極の手が、俺の脇腹をスルスルと撫でていた。 「おい!ちょ、待て京極!…ひっ!」 「弱いのか」 確認じゃなく、確信した口調でそう言った京極は、ニヤリと嫌な笑みを浮かべていた。 「弱くねっ、ぅあ!」 寒気が、寒気がハンパねぇ! 昔から 脇腹から背中にかけてを触られると ゾワゾワした感覚が全身に回って力が抜ける。 「手、手ぇ退けろ!」 「無理だな」 「無理じゃねぇよ!――って、おい!」 着ていたシャツを捲り上げられ 脇腹を、京極の舌が這う。 「なっ!!?や、やめろ!く、くすぐった……ひぅ!」 ヤバいヤバいヤバいって。 力入んねえから抵抗できねえし なんか、貞操の危機の予感! …よし、最後の手段。 成功する確率は低い、が やらないよりはマシだ。 俺はスゥッと息を吸い込んで叫んだ。 「誰かーっ!助けくれっ!頼むから!」 「おい、静かにしてろ…」 「おい!誰かっ!」 ―――バァンッ! けたたましい音と共にドアが開き その先には足を振り上げている高橋君がいた。
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