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「さて……生憎ともてなせる用意もないのだが……」
プラチナブロンドの頭髪をオールバックに纏めた黒いスーツ姿の老紳士。
顔には深く刻まれた年輪、目の下の隈と青ざめた顔色は死人の様な薄気味悪さすら感じてしまう。
恐る恐る名乗る僕に、老紳士は立ち上がり、表情も変えずに答えた。
「ほう……ここを訪れる者にしては礼儀正しい若者だな……。
私はネクロ=クエィト=グレゴリウス。
皆からは教授と呼ばれておる」
片手を胸の下で直角に曲げ、老人とは思えない真っ直ぐな腰を45度に折り曲げ、優雅に一礼する。
昔、映画かなんかで観た中世あたりの儀礼のシーンを思い出し、僕は思わず立ち上がって一礼を返していた。
すぐに老紳士……教授が腰を下ろしたので僕もそれにならいまたソファーに腰掛け直した。
「グリュック、紅茶を頼めるかね?
客人の分と二つだよ?」
教授が静かな声でそう言うと、どこで聞いていたのか不思議だけど、少しの間を置いて年の頃なら17~8歳?
ショートカットの金髪がよく似合う、白いワンピースの女性がトレイにポットとティーカップを乗せ、室内に入ってきた。
いらっしゃいませ、とほほ笑む彼女と目が合う。
その瞳は右が紅、左が蒼で……。
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