斎藤~この想いは~

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彼女に案内され、元々見学用に敷かれた畳の上に正座をする。 …ここから見ると的とは、かなり遠い場所にあるのだな そんな事を考えていると、彼女の準備が終わった様で、弓と矢を持って俺の前にやってきた。 「すみません、お待たせしました。」 「いや、構わない…弓道着とは、剣道着と似たようなものなのだな…」 俺は彼女が来ている弓道着に、否、彼女の弓道着姿を見てその凛々しさに見惚れていた。 後ろに束ねた髪もまた、その凛々しさを強調する様であった。 「そうですね。似てますが、微妙に違うんですよ?男子と女子でも、袴と胴着に違いがありますから!」 彼女は本当に楽しそうに笑う。 弓道を心から楽しんでいるのが、そこから見て取れる。 「では、行ってきます!」 初めの位置に彼女は立ち、綺麗な姿勢で弓道を始める前の作法を進めていく。 俺は、彼女の一つ一つの動作に目が離せなかった。 間近で見るとこんなに雰囲気が違うものなのだな…… 彼女は弓を引く。 俺は何故か緊張して、彼女が矢を放つ瞬間を見つめていた。 パーンッ と、気持ちよい程によい音がなる。どうやら、当たりのようだ。 彼女は残り三本を綺麗に命中させ、終わりの作法をして俺の前に戻ってきた。 「すごいな…弓道とは奥が深い、今日改めて実感した。」 「そう言ってもらえて嬉しいです!」 彼女はとても嬉しそうに笑っていて、今日は休日ながら、来てよかったと思わずにいられなかった。 「…俺の名前、斎藤一という。また……見学に来てもよいだろうか…?」 「はい!ぜひ、また来てください!斎藤さん!」 ……何故、こんなに胸が痛いのか 認めざるおえないな… 総司になんと言われるのやら、今から、とても不安に思った。 「名前でいい、名前で呼んでは…くれないだろうか」 少し耳と頬が熱くなった気がしたが、そんな事を考えていられる程今の俺は冷静ではなかった。 「一さん…でいいですか?また、来てくださいね!」 彼女は微かに頬が赤い様に見えた。 俺は最後に彼女へ礼を言って、弓道場をあとにした。 帰路の間俺は彼女の事で頭がいっぱいで、その後ろ姿を見つめている人物がいた事に気付くことはなかった。 おまけ→ ・
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