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「ところであなたは
私をどこで見つけたの?」
「お姉ちゃん?森の中だよ」
続けて彼が口を開く。
「ここから少し外れた森の奥に居た。大木の下にね。」
そこに行けば住んでいた町に戻る何か手掛かりが見つかるかもしれないと思った…。
二人は暗い森の中に居た。
「ところであなたの名前を聞いてなかった。何て名前?」
「僕はミハエル。お姉ちゃんは?」
「あぁ!そっかごめん。私は蒔苗菜緒。菜緒でいいよ。」
その後も菜緒とミハエルは歩き続けた。1時間程歩いただろうか。茂みが少し開いた場所にうっすら光る大木があった。大木から放たれているのであろう光が暗闇に大木を浮かばせる。実に幻想的であった。二人はしばらく立ち尽くしていた。
沈黙を破りミハエルが口を開く。
「僕はこの場所が大好きなんだ。辛い日々を一瞬でも忘れさせてくれるこの場所がね。」
ミハエルは続けて話す。
「菜緒にはさっき話したけど、この街は魔王に支配されてる。魔王の城に捕らえられた人の運命を知ってる?奴隷の様に働かされ、それに逆らえば石にさせられる。そうして人が減ればまた新しい人間を捕らえる。40年もそれの繰り返し。捕らえるのは大人ばかりで、この街に住むのは子供ばかりなんだ。僕の両親も僕が小さい時に連れて行かれたらしい。祖母から聞いた話だから両親の顔さえ覚えてないんだけどね。」
菜緒はハッとした。ミハエルを初めてみた時に感じた違和感。私より年下であろう彼が発するオーラだ。この年でどれだけの悲惨な光景を目の当たりにして来たのだろう。あまりにも自分と生きて来たた状態が違った。彼は深い深い闇の中にいると思った―。
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