10人が本棚に入れています
本棚に追加
世の中の誰もが、自分の過去を変えたいと思うもんだ。だが、俺がそれを考える事の無意味さを知ったのは、ずっと昔の話だ。
某有名アニメでも青いロボットと映画の時だけ妙にかっこよくなるへたれメガネがタイムマシンとやらを使っていろいろやっていたが、二次元はいいもんだと冷めた目で見ていた少年時代を思い出す。
なんて考えを俺はまだ朝早い赤陽高等学校のトイレの個室でしている。
個室は奥から一番奥、ここがマイベストポジション。個室の中でなぜかここだけ洋室タイプ。本当にありがたい。ただ、暖房機能がないため、便器の冷たさが腹痛を促進させる効果がある。まぁそのマイナスを差し引いても和室タイプよりはるかにマシだが。
俺は昔から下痢に悩んでいる。この下痢で数々のチャンスをふいにしてきた、中学の部活の試合でも腹痛故に調子が出ず敗退。さらにテストでも途中退場。もはや笑い話にもならん。
いまや高校一年を過ごした俺の評判はクラス中に広まり、新しい二年生クラスになってからも少数の人間が俺をゲリ彦と呼んでいる。どうやら先生の間でも俺の噂は広まりつつあるみたいだし、これからの高校生活も暗雲の兆しがビンビンしてくる。
俺以外に誰も居ないトイレ。そりゃそうだ、誰にも俺が腹痛に苦しんでいると悟られないよう、こうして早めに学校に来て苦しんでいるのだ。これがクラスの奴にでもばれてみろ、俺のあだ名はクラス公認でゲリ彦に決定だ。全く、俺の家じゃ普通なのに学校では痛み出すとか、なんて理不尽な腹なんだか。
あぁ、こんなめんどくさい胃腸の持ち主でなければ、あいつとのこんな出会い方ももしかしたらなかったのかもしれない。
することを済ませて教室に戻ろうとするが、今日はついてない。
「なん……だとっ!?」
最初のコメントを投稿しよう!