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「ねえ、なぜあのような行動を取っていたのか教えてくれない?」
トキたちは町にある一軒のカフェで向かい合って座っていた。
「ふん、お前には関係ないだろう」
少女はつん、とそっぽを向いた。
つややかな腰まである黒髪に整った顔。華奢で色が白いが、手足がすらりとしているため不健康な印象は受けない。
なかなかの美少女である。
背はトキよりも10センチほど低い。ひざ丈の黒のワンピースに臙脂のボレロを羽織っている。
「それなら、僕は関係ないのに巻き込まれた形なんだけど。それに女の子がそんな言葉づかいなのはあまり感心しないよ」
「オレは男だ!女の子じゃねぇ!」
「え……どこからどう見ても……その格好といい……」
「あ……」
自分の恰好を見て、元少女はパッと顔を赤らめた。
「これはオレの趣味じゃない!」
「そう…なの…それよりも僕は巻き込まれた人間なんだよ。逃げていたわけを教えてくれたっていいか」
「うぅ。あいつが帰るまでは屋敷に戻りたくないんだよ」
「あいつ?」
「誰だっていいだろ!でも、もう帰ったくらいかな。巻き込んで悪かったな」
元少女は席を立つと、じゃあと言って店から出ていった。
「ちょっと、これって僕の奢りなの?」
元少女の飲んでいたコーヒーを前にして、トキは店の扉に向かってつぶやいた。
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