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「はぁ…あの子に門の場所聞いておけばよかった…」 ようやく門の前に辿り追いた時には日が大分傾いてしまっていた。 門の横にある鐘を叩くとメイドが一人やってきた。 「あの、すみません。本日から住み込みで働かせていただく予定のトキ・オリトです」 「はい、伺っております。こちらへどうぞ」 メイドがパンッと手を叩くと鉄の門がギギィと音を立てて開いた。 一体どんな仕組みになっているのか不思議に思ったが、メイドがさっさと歩いていくので慌てて後を追いかけた。 門から建物までが遠い。 到着したころには、屋敷の門まで到着するのに蓄積された疲労が倍になったように感じた。案内してくれたメイドが疲れた様子を見せないのはさすがというか、慣れているというか。 連れてこられた部屋で足をもみながら待っていると、一人の男性がやってきた。 「トキ・オリトさんですね。私はこの屋敷で執事をしておりますエリン・ホタカと申します」 「ここで庭師として働かせていただくトキです。よろしくお願いします」 トキはエリンと握手した。エリンは見たところ60歳くらいであろうか。目尻のしわが何とも優しげな印象を与える。 「トキさんはかの高名な庭師、コヨミ・オリトさんのお孫さんでいらっしゃるとか」 「ええ、祖父のようになりたいと思い、庭師になったのです」 「そうですか。コヨミ・オリトの血を引くのならば、あの庭を…」 「え?」 「いえ、今日は疲れていらっしゃるでしょうから食事を摂られたらお休みになってください。トキさんの部屋まではナナに案内させますよ」 「ありがとうございます」 ナナ、とエリンが呼ぶと先ほど案内してくれたメイドが現れた。 案内された部屋は、ベットと机があるだけのシンプルな部屋であったが居心地はよさそうだ。トキはベッドに転がると、ふぅと大きく息をついた。
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