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コンコン、と扉を叩く音で目が覚めた。いつの間にか寝てしまっていたようだ。寝てしまっていた時間は短かったようだが、相当疲れているのだろう。
「トキさん、食事の用意ができましたのでいらしてください。場所は先ほど我々が顔を合わせた部屋の隣です」
どうやら、エリンのようだ。
はい、と返事をすると食堂に向かった。
食堂に着くと、人が集まっていた。
「すみません、お待たせして」
「いえいえ、かまいません。この屋敷の主人がまだいらっしゃってませんので」
トキが詫びを言うと、エリンがほほ笑んでそう返した。
「ここでは主人とともに食事をするのですか?」
「ええ、珍しいでしょう」
珍しいも何も、そのようなことは聞いたことがない。身分、という概念が根付いているこの国では、目上の者と共に食事をする、ということはない。
しかも、ここは別邸とはいえ公爵家である。主人、ということは公爵の血筋の者であろう。公爵、といえば家柄でいうと王家の次に高いのだ。そのような自分よりもはるかに身分の高い方と食事をするのはいかがなものか、と考えていると、エリンの声が聞こえた。
「いらっしゃいましたね」
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