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トキは扉のほうを振り返ると、少年が立っていた。シャツにセーター、7分丈のパンツに革のブーツ、という至ってシンプルな服装だが、どれも仕立てが良さそうだ。
「おまえ、そんなところに立ってたらじゃまなんだけど」
「すみません」
「って、えぇぇぇ!!おまえ昼間の!!」
「あの、おんなムグッ」
「それ以上言ったら殺す」
よく見ると、少年は昼間にみた元少女であった。長い黒髪が、顎のあたりで揃えられたやわらかな栗色の髪になっている。
トキをキッと睨みつけている目は灰色がかった緑色で、きれいな二重瞼と長い睫に縁どられている。
必死で手を伸ばしてトキの口を塞ごうとしているのがなんだか小さな子どものようで、トキは笑いそうになったが、マキセにも他の使用人にも良い印象は与えないと思い、なんとかこらえた。
「マキセ様、食事の準備は出来ております」
「ああ、エリン、わかった」
マキセはトキの口を塞いでいた手を外すと自分の席に向かった。
トキも席に着くと、食事が始まった。
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