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【AM 07:15】
《Sha nananana・・・・・・》
ジェスの運転する年代物の車のラジオから、今ではクラシックロックのカテゴリーに入る、GUNS N' ROSESのアクセル・ローズの独特の歌声が流れている。
「Welcome to the Jungle・・・か。
俺はWelcome to the Jail《牢屋へようこそ》って気分だぜぇ」
と独り悪態を尽きながらも指でリズムを取りながら、ニューヨーク市警へ向けて車を走らせていた。
Detective Grade 1。
様々な事件を解決する内に階級も自然と上がり、それに見合う給料も上がって久しいが、犯罪組織や時にはテロリストと渡り合うのは日常茶飯事であった。
その度に傷は増え、妻の心配もやがては小言に変わっていったのもまた久しい。
その小言はジェスの身を案じるが故にの事だと充分承知していたが、一ヶ月前に銃撃戦により重傷を負った際に
「仕事を続けて死ぬか、家族の事を考えて生きるか選んでよッ」
泣き腫らした瞳でジェスに叫ぶ様に告げる妻に、上手く答える事が出来ないまま、業を煮やした妻は娘を連れて家を出て行った。
「勝手にしやがれ」
と半ば自暴自棄気味で吐き捨てるが、10年という月日の内に自分の頭の毛も少しずつ抜けはじめる中、やはり長い間、自分を支えてくれた妻の不在は、生活の様々な部分に影響が現れ始め、ジェスは思わず
「意地っ張りめッ」
と吐き捨てていた。
そんなジェスに構う事も無く、携帯電話が鳴り響き、ジェスは無造作に携帯を取っていた。
「ジェス。
もう署に着く頃か?」
「あと10分って所かな。
朝飯のお誘いですかぁ?」
電話口の署長であるマッカランは絶句していたが、彼もまた小言の多い輩である。
「・・・お前さんにゃとっておきの朝飯だ。
なるべく早く来てくれ」
言葉の端に苛立ちを浮かべつつ、それだけ言うとマッカランは一方的に電話を切った。
「とっておきの朝飯だって?
あいつがそんな事抜かすときゃ、ロクでも無い事ばっかだ・・・」
ジェスは眩しく爽やかな朝の中、暗然とした気持ちでタバコに火を点けていた。
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