第2章 10代最後の夏

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愛が面接会場を出ると、事務所のマネージャーである吉村が迎えに来ていた。外はすでに、日が落ち始め、薄暗くなりだしていた。 吉村は30代前半の男性で、体型は小太り。 お世辞にも、ルックスは良いとは言えない。 おっちょこちょいで、不器用な所があるが、どこか憎めない、人を和ませる不思議な魅力の男であった。 愛が車に乗り込むと、車を発進させながら、吉村がおもむろに口を開いた。 「愛ちゃん……、面接どうだった?」 愛の表情から、すでに結果を察していたのであろう。 愛を思いやるような、優しい口調だった。 「吉村さん……、ごめんなさい。今回も……」 愛が、絞りだすように応えた。 「何も面接は、今回だけじゃないよ。大丈夫。 絶対次のチャンスはあるから」 吉村が、優しい眼差しで微笑んだ。 「ごめんなさい。吉村さんは、いつも精一杯応援してくれてるのに、あたし、全然期待に応えられなくて……」 愛の目には、涙が浮かんでいた。
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