1183人が本棚に入れています
本棚に追加
愛が面接会場を出ると、事務所のマネージャーである吉村が迎えに来ていた。外はすでに、日が落ち始め、薄暗くなりだしていた。
吉村は30代前半の男性で、体型は小太り。
お世辞にも、ルックスは良いとは言えない。
おっちょこちょいで、不器用な所があるが、どこか憎めない、人を和ませる不思議な魅力の男であった。
愛が車に乗り込むと、車を発進させながら、吉村がおもむろに口を開いた。
「愛ちゃん……、面接どうだった?」
愛の表情から、すでに結果を察していたのであろう。
愛を思いやるような、優しい口調だった。
「吉村さん……、ごめんなさい。今回も……」
愛が、絞りだすように応えた。
「何も面接は、今回だけじゃないよ。大丈夫。
絶対次のチャンスはあるから」
吉村が、優しい眼差しで微笑んだ。
「ごめんなさい。吉村さんは、いつも精一杯応援してくれてるのに、あたし、全然期待に応えられなくて……」
愛の目には、涙が浮かんでいた。
最初のコメントを投稿しよう!