第1章 リアル

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愛は、新たな決意を固め、岩田からもらった合格祈願の御守りを、トートバッグの中に、再び大切にしまった。 愛には、普段から奇妙な癖があった。 その奇妙な癖とは、日々の何気ない日常生活の中で、自分の運を試すといったものである。 例えば、手のひらで硬貨を放り投げて素早く手で隠し、硬貨が表か裏かを当てることで、その日の運勢を占ったりするのである。 彼女は、日常のほんの些細なことまで、運を試してしまう癖があった。 卵の形が崩れることなく目玉焼きが作れたら、その日は仕事がうまくいくとか、そんな具合である。 面接会場の廊下の奥に、小さなゴミ箱が置かれているのが見えた。 愛は、無性にこれからの自分の運命を占ってみたい衝動に駆られてきた。 一度気になると、やらなければ気がすまない性格であった。 (あたしのこれから先の運命を試してみたい……) トートバッグの中にあるノートから、愛は紙を一枚破り、丸めて野球ボールのようにした。 面接を行った部屋とは違う階の廊下なので、人はほとんど歩いていない。 距離はかなり遠い、10回挑戦して、1回入れば良い方だろうか。
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