第1章 リアル

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心を落ち着かせ、愛は二度目の投球を行った。 一度目が成功しているだけに、二度目の方が緊張の度合いは強かった。 より慎重に投げた為か、最初の投球に比べて、二度目の投球は飛距離が少し足りないように思われた。 もう駄目かと思われたが、丸めたボールはゴミ箱のふちにあたり、そのままスポッと中へと入った。 (うそ!?本当に入っちゃった。あと一回、あと一回入れば……) はたから見れば、異常な行動である。 大人の年齢に差し掛かった女の子が、精神を集中させ、一人ゴミ箱に向かって紙を丸めたボールを投げているのだから。 だが当の本人にしてみれば、これからの自分の人生を占う一大イベントであった。 愛はじっと目をつぶり、心を無心にして丸めたボールを放り投げた。 だが、直前に目をつぶったのがまずかったのか、彼女の想いとは裏腹に、ボールは完全に軌道から右にずれていた。
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