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愛は、この小太りのプロデューサーに見覚えがあった。
プロデューサーは、名を坪倉(つぼくら)と言った。
数々のドラマを手掛けており、芸能界では知らぬ者のいない、敏腕プロデューサーの一人だった。
愛が面接室に入ると、坪倉は書類に目を通したまま、愛とは視線を全く合わせることなく、愛に着席を促した。
椅子に着席し、愛は緊張した面持ちで坪倉を見つめる。
未だに坪倉は、愛と目線を合わそうとしない。
「67番の……、城崎愛さんね。
オフィス美山(みやま)所属……」
そうつぶやき、坪倉はやっと選考書類から顔を上げ、愛と目線を合わせた。
相変わらずのけだるそうな雰囲気ではあったが、その目つきにだけは鋭さがあった。
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