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「暑い?」
坪倉が、突然きりだした。
「え?い……、いや、暑くないです。だ……、大丈夫です。」
本当はちょっと蒸し暑かったが、愛は咄嗟に嘘をついた。
「あ、そう。なんかクーラー調子悪いみたいでさ……。美山さん元気?」
「え?」
「社長だよ、社長。美山社長。」
「あ、はい。社長は元気です」
「あ、そう。美山さんによろしく言っといて。またゴルフ行こうってさ」
「はい。必ず伝えます!ありがとうございます!」
自分の所属する事務所の社長である美山は、まだ40代の女性の社長だが、坪倉のような一流のプロデューサーと、このように懇意にしていることを愛は誇らしく思った。
しかし、自分の所属する事務所の社長と、面接官であるプロデューサーが懇意にしているからといって、主役がもらえるほどこの世界は甘くない。
別に、愛の事務所の社長だけが、プロデューサーと親しくしているわけではないのだ。
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