第1章 リアル

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「暑い?」 坪倉が、突然きりだした。 「え?い……、いや、暑くないです。だ……、大丈夫です。」 本当はちょっと蒸し暑かったが、愛は咄嗟に嘘をついた。 「あ、そう。なんかクーラー調子悪いみたいでさ……。美山さん元気?」 「え?」 「社長だよ、社長。美山社長。」 「あ、はい。社長は元気です」 「あ、そう。美山さんによろしく言っといて。またゴルフ行こうってさ」 「はい。必ず伝えます!ありがとうございます!」 自分の所属する事務所の社長である美山は、まだ40代の女性の社長だが、坪倉のような一流のプロデューサーと、このように懇意にしていることを愛は誇らしく思った。 しかし、自分の所属する事務所の社長と、面接官であるプロデューサーが懇意にしているからといって、主役がもらえるほどこの世界は甘くない。 別に、愛の事務所の社長だけが、プロデューサーと親しくしているわけではないのだ。
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