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間もなく僕らの目の前には二杯のアイスコーヒーが届けられた。正直僕はそれにシロップとミルクをたっぷりかけて頂こうと思っていたのだが、彼女がなにも加えずにそれを飲むのを見て、少しばかり気取ったのを後悔してから渋々それを頂いた。
「……それで、話とはなんでしょうか?」
不意の彼女からの言葉に僕は困惑した。えっ、と一言洩らし、最初に手を付けた以来のコーヒーにまた手を伸ばし次の言葉を探っている。
話をしようと言い出したものの、一体何を話したいのか。それが自分でも不明瞭だった。いや、薄々分かっている。それを口に出したくない、意識してしまいたくないだけなんだ。自分自身に求めるイメージを壊したくない、そんな我儘な自己愛でショックを受けたくないだけだった。
戸惑う僕を見て彼女も理解したのだろう。僕が話を切り出せない理由を。
キョロキョロとさせた僕の両目が彼女を捉えた時、いや、吸い込まれた時。彼女は柔らかな声で、なおかつはっきりとした口調でこう言った。
「わたしはみんなと違う。わたしの心は服従されない」
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