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「小林さん……君は……」
「知りたいのでしょう? わたしのこと、そして、あなた自身のこと」
彼女は真っ直ぐ僕の目を見つめて言った。自己愛という、どうしようもなく固い鎖で縛られた僕の秘密。自分ではとても開くことのできない鉄扉の鍵を彼女は持っている。
「わたしが知っている限りのことを話すわ。でもきっとそれはあなたにとってとてもグロテスクなこと。世界を愛し、人間を愛するあなたにとって最も残酷な事実かもしれない。それでも聞く勇気はあるかしら」
多分それは最後通告だ。今まで暮らしてきた世界には戻れない。どこに向かうかも分からない片道切符を渡されたようなものだ。
でも、僕はきっとそれを受け取る必要がある。
それが、僕を地獄へ誘う悪魔から渡されたものだとしても。
僕がゆっくりとうなづくと、長くなるわよと言って彼女は話し始めた。
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