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世界が好きだ。この地球という天体が、この大銀河の中で最高に好きだ。
平和が好きだ。誰も無益に血を流さず、誰も笑って生きていけるこの世界が好きだ。
自然が好きだ。朝、昼、夜。全てが移ろいで生まれ変わり、新しい世界を見せてくれる、粒子の全てが好きだ。
人間が好きだ。自分に無いものを常に魅せ続けてくれる、そんなみんなが好きだ。
孤独が好きだ。今までの自分と対面し、これからの時間を想像する。そんな闇が大好きだ。
生まれてきてから十五年と七ヶ月。僕は様々な経験と、知識と、ほか真偽怪しい伝聞で、僕なりの世界観を構築した。僕だけの世界であって、他の誰のものでもない世界。奪われず、与えられず、自由に闊歩できる三千世界だ。それが僕の愛する地球であり、人間であったりする。
「おーい、委員長。聞いてんのか? 掃除区域の割り振りトイレだけ余ってるんだけど」
クラスで一際声も態度も大きな横着者。その彼の言葉で改めて後ろの黒板を見回してみると、確かにトイレ以外の清掃区域の文字は黄色い楕円で囲まれていた。
「小林とさ、委員長。デキちゃってる感じなんだから一緒に女子トイレやっちゃいなよ」
口笛と笑い声で騒がしい中再び黒板の方に目を向けると、囲まれていないトイレの文字の上にはくっきりと「女子」の文字があった。
そして横着者の指した小林とは、寡黙であまり他人といる様子を見たことがない、そんな一つ結びの女の子であった。会話は数回しかしたことがないが、大人しいながらに溌剌とした口調で、また成績がいいことも聞いたことがある。
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