0人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、どうやら残ったのは僕と小林さんだけということらしい。他の清掃区域が正しい人数で割り振られているのを確認し、一番左前の席に座っている小林さんに目を向ける。
「どうやら小林さんと僕とで女子トイレを掃除することになりそうですが、それでも構いませんか?」
「わかりました」
小林さんの返事を受け、更に教室は騒がしくなった。相も変わらず横着者やその他男子は大声で笑ったり、両人差し指と薬指で必死に笛を鳴らそうとしたりしていたが、女子グループは嘲笑の表情で小林さんを見ながら、彼女同士で密かに話している様子だった。しかし僕はそんな喧騒の中、小林さんの一言が教室の誰の耳にまで届くような声で発せられたことに感動していた。しかし、そんな些細なことに気付くまで彼等の世界は広くなかった。
◇◆◇◆◇◆
四限のホームルームと昼休みが終わると、早速先程決まった清掃区域が適用され、僕は担当の女子トイレに向かった。その間際、もしトイレを済ませた女子に遭遇し問題にならないように、あらかじめ小林さんに、入室OKなら扉を全開にしておくことを頼んでおいた。
女子トイレに到着すると扉が全開になっていた。恐る恐る覗いてみると、そこにはデッキブラシを持った小林さんがいた。
最初のコメントを投稿しよう!