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桜が舞う春。
四月の一番行事は高校の入学式。
暖かな気候が何となくくすぐったい朝。
私はスヤスヤ眠っていて、遅刻しそうになっている。
「やばっ?!
藤ちゃんが迎えに来るんだった」
「空愛、やっと起きたのかよ?
遅刻すんなよ」
「春ちゃん、何で起こさないのよぉ‥
隣にいたんだよね?」
「空愛が寝坊助なのは分かってるけど、起こしたら次から期待して起きねーだろ!」
「もぉー
嫌なお兄ちゃん!」
空愛がムスッと拗ねていると、母親が穏やかな笑顔で部屋に入ってきた。
「空ちゃん?
早く着替えてこれを食べて行ってらっしゃい」
「うん。
桜ママ、ありがとう」
「うふっ
空ちゃんは可愛いわね」
母、桜はそう言うと部屋から出て行って旦那の要を起こしに行ってしまった。
「はむっ
モグモグ‥」
「お前‥
食いながら着替えんなよ」
「だって、急がないと藤ちゃんが来るから‥モグッ‥時間が‥モグッ」
「食うか、喋るか、どっちかにしろ」
「春ちゃんは時間いいの?」
「あっ‥
そろそろ行かねーと遅刻だな」
そう言って、兄の春は部屋から出ていき階段を下りて家を出ていった。
「よし、着替えたし歯磨きと髪!」
「空愛‥
おはよう」
「あっ‥
要パパ、おはよう」
「今日も一段とママにそっくりだなぁ‥
桜が二人になったようだよ」
「ははっ‥
大袈裟だよ、それ」
空愛は一階に下がると、髪を結んでから歯磨きを済ませると家を出る。
「ソラ、おせーぞ」
「ごめんね、藤ちゃん」
「まあ、いいけど‥
ちょっと早歩きな」
「うん‥」
空愛は親友の藤 茜の隣に並ぶと、急ぎ足で歩く。
「藤ちゃん、寝れた?」
「まあ、並程度には寝た」
「そっか‥
私は爆睡しちゃって、危なかったよ」
「まだ寝てたら、起こすのにな」
「顔が怖いよ、藤ちゃん」
茜はフッと笑うと、空愛が遅れないように手を引いて歩き出す。
「藤ちゃん?」
「すぐ迷子になるから、繋ぐだけ」
「うん‥
ごめんね、ドジで」
「まあ、それはいい。
お前‥」
「ん、なぁーに?」
「リボン曲がってんぞ」
「う、嘘?!」
「ホント」
茜はニヤッと笑うと、立ち止まっては空愛のリボンを綺麗に直した。
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