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茜がションボリ顔をして歩いていると、それを呼び止める声がかかる。
「もしかして、茜くん?!」
「へっ?
あ、美羅先輩‥」
「久しぶりだね?
茜くんもここの新入生なんだね」
「あ、はい‥
美羅先輩も白咲だったんすね」
「うんっ
茜くん、メアド聞いていいかな?
久しぶりだし遊ぼうよ」
「えっと、はい‥
じゃあ、送ってもらえますか?」
「オッケー
じゃあ、赤外線だね」
美羅と茜がメアド交換をしていると、空愛は何やらモソモソし始めた。
『あれ?
私、携帯ポケットに仕舞ったよね‥
何でないの?!』
空愛が益々モゾモゾしていると、茜がプッと笑ってこう尋ねてくる。
「さっきっから、モソモソして何ウケ狙ってんだよ!
ソラ、最高なんだけど」
「ふ、藤ちゃん‥
携帯無くしちゃったかも」
「はぇ?!
それは一大事だな!
笑って悪かった」
「それはいいの。
でも、いつの間に無くしちゃったんだろ?」
「掲示板じゃね?
確か転んだって言ったよな」
「掲示板は人がいっぱいだったし、どうだろ?」
空愛が不安げにそう呟くと、茜はフッと笑ってもちろんこう言った。
「ソラが困ってるなら、携帯鳴らしてでも探す。
だから、そんな不安げな顔すんなよ」
「うん‥
藤ちゃん、ありがとう」
「当たり前だろ。
ソラは大事なダチだかんな」
「うんっ」
空愛はニッコリ微笑むと、茜は美羅に一言断ってから移動を始めた。
「あの子‥
茜の何なんだろ?
友達なんかじゃないわね」
美羅は二人が去った後にそう呟いたが、誰一人それを聞いた者はいない。
「確かこの辺で転んだんだよな?
俺、人が邪魔で見えなかったし状況分かんなかったし‥」
「うん‥
実はね、ここの先輩が助けてくれてね?
だから怪我はなかったの」
「じゃあ、その右手は?」
茜が真顔でそう尋ねると、空愛は何とか言い訳を考えるが思い浮かばない。
「私を庇ってくれて、怪我してないか確認しようとしたら叩かれて‥
でも全然軽くだし大丈夫なの」
「なんか、お前ソイツ庇ってないか?」
茜が見抜いたような言葉を発すると、空愛は戸惑いながらこう呟いた。
「あのね?
実は私、一目惚れしたみたいで」
「はぁ?!」
茜は空愛のその言葉が信じられず、口を開けたままで暫く固まってしまった。
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