三番街の処刑人

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しかし、稀にその禁止令を無視して外出する者がいる。 ダークソウルは闇に潜む。それは太古の時代から変わらない、世界の理。 ところが近代革命以降、街には夜でも光が溢れるようになり、時が経つにつれ奴らに対するヒトの危機的意識も低下していった。 だが、世界は太古の時代より何も変わっていない。 たとえ闇夜に光が溢れる世になっても、危険とは常に隣り合わせであることを、忘れてはいけないのだ。 それでも、「自分は大丈夫だ」といって外出する者がいるのだから、こればかりは奴らに喰われても当人の自業自得である。 とはいえ、発令以降も犠牲者が増えていることを考えると、今回もやはり禁止令を無視して外出している者はいるのだろう。 最悪、業を煮やした警察が現場に張り込んでいるという可能性も-- 「さすがに、それはないか」 そう呟きながら、楝は苦笑いする。 この夜間外出禁止令は、法的な強制力を持つ。故にたとえ警察機関であっても、この禁止令には従わなければならない。 『この法令のせいで、我々は犯人を捉えられないのだ!』 と以前似たような事件があった際、警察関係者が受付の者に文句を言っていたのを見たことがある。 彼らが不満を持つのも理解できるが、これはヒトの生命を守るための措置だ。 それにもしこれを破った場合、たとえ警察関係者であっても処罰の対象になってしまうので、不満はあっても実際に行動を起こす者はいないだろう。
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