三番街の処刑人

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その瞬間。 突如背後にダークソウルが現れ、男性に襲い掛かかろうとした。 しかし次の瞬間、現れたダークソウルは襲い掛かった体勢のまま、闇の霧となって霧散したのである。 そして、ダークソウルが消えた場所には、先程まで男性と向かいあっていたはずの楝が、心具を振り下ろした状態で立っている。 まさに、一瞬の出来事だった。 「……運が良かったな。私がいなかったら、今頃おまえは奴の餌だったぞ」 呆然とこちらを見つめる男に、楝はいった。 肝心な男の方は、まるで何が起きたのかわからないといった様子だ。 突然生命の危機に瀕し、そしてそれが他の者に倒された。それが今、彼の眼の前で一瞬のうちに起きたのだ。 混乱するのも、無理はないだろう。 しかし男は我に返るなり、何度も深呼吸をし始めた。 恐らく混乱した気持ちを落ち着かせて、冷静さを取り戻そうとしているのだろう。 そういうところは仮にも刑事、といったところだろうか。 ーーしかし、面倒なことになったな…… 深呼吸をする男を見て、楝はため息をついた。
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