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調査中に管轄機関の関係者と遭遇すれば、彼らの指示に従わなくてはならない。
このまま無視して調査を続けようかとも思ったが、そんなことをすれば後で奥村の説教が飛んでくるのは眼に見えている。
加えて、彼は今正に奴らに襲われたところだ。仮に撤退命令を出されて、それに従ったとして、襲撃が起きた現場に人を残していくのはさすがに忍びない。
ここは、彼の護衛を引き受ける対価として、調査の続行を許可するよう、取引を持ちかけるのが無難だろうか。
そう思い、楝が刑事の男に声をかけようとした時だった。
「う、うわあああ!!」
突如三番街に鳴り響いた、甲高い悲鳴と一発の銃声。それは即ち、今この瞬間、最悪の事態が起きたことを意味していた。
悲鳴の聴こえ方からして、襲撃場所はここからそう遠くはない。楝は、困惑する刑事の胸倉を掴むと、凄まじい勢いで男を問いただした。
「おい!おまえ以外に、ここへ来ているのは何人だ!」
「な……なぜ、貴様にそれを答えねばならん。こ、こちらは極秘でだなーー」
「早く答えろ!」
急ぐあまり張り上げてしまった楝の声に、刑事は一瞬怖気づく。しかし過給の事態が起きていることを察したのか、刑事は渋々その口を開いた。
「……三人だ。私を含め、少数で極秘捜査を命じられていた」
三人。先程の悲鳴と銃声が、一人のものか、それとも複数のものだったのかはわからない。
しかしもし彼のように単独行動していたのだとしても、無事である保証はない。
いや。恐らく、既にもうーー。
だからといって、ハンターがこの状況を野放しにしておくことなどできない。
楝は男を突き放すと、悲鳴のあった方角へと走っていった。
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