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「え……?」
思わず間抜けな声が出た。出てきた子どもの頭に小さな尖ったものがついていたからなのと、子どもが転んで出た扉の先が黒い渦を巻く底なしに見えたから。
さっきまではアパートの廊下だったはずだ。目を瞬いて見ても真っ黒な闇はずっと目の前に存在している。
落ちていく子どもが闇の中で振り返って、にんまりと笑った。
ぞっとした。
人のものじゃなかった。赤く光る目が俺を捕らえて、背筋に鳥肌が立って汗が滲む。
「とりっく!」
彼が大きな声で叫ぶと、いつの間にか手に絡まったシーツが物凄い力で俺を、その闇に引きずり込んだ。
「うわぁああああ!!」
その何かと一緒に落ちた。落ちたこと以外わからない。
暗闇の中へ……落ちた。
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