やってきたのは……。

4/4
前へ
/33ページ
次へ
「え……?」  思わず間抜けな声が出た。出てきた子どもの頭に小さな尖ったものがついていたからなのと、子どもが転んで出た扉の先が黒い渦を巻く底なしに見えたから。  さっきまではアパートの廊下だったはずだ。目を瞬いて見ても真っ黒な闇はずっと目の前に存在している。  落ちていく子どもが闇の中で振り返って、にんまりと笑った。  ぞっとした。  人のものじゃなかった。赤く光る目が俺を捕らえて、背筋に鳥肌が立って汗が滲む。 「とりっく!」  彼が大きな声で叫ぶと、いつの間にか手に絡まったシーツが物凄い力で俺を、その闇に引きずり込んだ。 「うわぁああああ!!」  その何かと一緒に落ちた。落ちたこと以外わからない。  暗闇の中へ……落ちた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加