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瞼が重い。けれど、手に感じるこれは葉?匂いも、草原のような匂いがする。ここはどこだ?
ゆっくりと目を開ける。
「うわっ!」
驚いて身を起こし後ろへとなんとか後ずさる。
目の前には光る赤い目と、口から覗く牙、そして何より額から突き出る鋭い二本の角が人であらざるモノだと訴えてくる。
俺は記憶を掘り起こした。掘り起こして背筋にひやっとしたものが走った。俺はこいつに、"連れていかれた。"んだ。
「起きたー!」
けど、その子どもはずいぶんと明るい声で歓喜した。嬉しそうに表情を綻ばせているのを見ると、今まで怪しく光っていた目がくりっとした大きな目に見えてくる。
まじまじとよく見ると、牙も角も実際にはそんなに大きくなかったようで、そこまで危険な感じはもうしなかった。
「……お前、誰だよ。」
「鬼。」
「へぇー、ふーん、ほぉ?……ここどこだ?」
「地獄。」
「え……死んだ?」
「ううん。」
返答が端的過ぎて正直よくわからない。何個か質問してみても、それ以上の情報をくれなくて、少し混乱する。
俺は頭を抱えて考え込んだ。少し整理をしてみよう。相手は鬼だと主張する。まぁ、さっきのこともあるし、目の前のその角が何よりそれっぽい。
「…………。」
「いたいいたいいたいっ!」
徐に手を伸ばして角を引っ張ると、本当に痛そうに目の前の子どもを頭を振って抵抗する。更に目元に涙を浮かべていた。
どうやら角は本当に本当に本当にほんとーに本物らしい。
鬼が居て、ここは地獄だという。俺は辺りを見回してみた。地獄という割りには草が生えただっぴろい草原が続いている。特にこれと言って悲惨な場所は見当たらない。
「……地獄なのか?ここは本当に。」
「うん。僕等が住んでる世界だから。君達はそう呼んでる。」
鬼はなぜか嬉しそうににっこりと笑った。子鬼なのだろう、牙も角も小さいせいか、普通の子どもと何ら変わらないように見えた。
「こらーーーっ!」
また考えようとした時、いきなり頭の上から声が飛んできた。驚いて上を見上げる。見上げて更に驚いた。
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