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「あ、うん。で、俺は帰りたいんだけど、どうすればいい?」
「知らないわ。」
そうだ、帰れば問題はない。と、思ったのに、魔女にあっさりと処断される。どういうことなのか、次の言葉を待つように彼女を見た。
「トラが連れて来たんですもの。私は知らないわ。それに、並大抵のことじゃここら生身の人間が出るなんで無理だし、そのうち他の奴等に頭からボリボリ食われるといいわ!」
最後辺りが彼女の願望が混じっているような気がする。楽しそうに俺似人差し指を突きつけてくる辺りかなり。
トラ。と呼ばれたのは多分鬼のことで、俺は鬼の方に視線を向ける。どうやらまだめそめそしていたようで彼は慌てて目元自分の袖で拭った。
「……とりっくだよ。とりーとを選ばなかったにーちゃんが悪いんだ!」
ぷいぷい。っとそっぽを向く鬼。どうやら俺が悪いらしい。ハロウィンのトリックオアトリートと言えば、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ。って意味だ。これは悪戯にしてはしすぎな気がするわけで。
こめかみがぴくぴくとなるのが自分でもわかる。
「帰ったら菓子やるから、帰せよこのガキ!」
「ひぃっ!!」
「もー、今更無理よ。そんなこと!」
掴みかかった瞬間、魔女が呆れたように呟く声が聞こえた。無理ってどういうことだ?と視線を魔女へと向ける。
「む・り・よ。聞いたとこによると、ハロウィーンで連れてこられたみたいじゃない。貴方。それじゃあ帰るのは無理よ。」
「なんでだよ?たかが菓子やらないくらいで、こんなとこにずっといろってことか?」
「あら、貴方。ハロウィーンの本当の意味、知らないのね。」
鬼のほっぺをぐいぐいと摘みながら、魔女を睨みつける。それを小ばかにするように魔女は笑って目を細める。
いちいち勘に触る女だ。
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