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「ハロウィーンは、一年に一度。この世とあの世を結ぶ門の一つが開く日。私たち魔物や、幽霊なんかが現世に行ける日。仮装はね、そんな私たちから子どもが連れ去られないようにやっているの。でも、そんな頻繁に引き込まないわ。代わりにお菓子をくれておもてなしをしてくれるなら喜んで帰る。でも、おもてなししてくれないと、私たち怒っちゃうんだから。」
「怒ったら連れてかれるってわけか?」
「そうよ、グループの中に一人は紛れ込んでるわ、貴方達が気づかないだけ。」
「……でも、そりゃあ西洋や欧米の話だろ?なんで鬼が。」
「グローバル化よ。」
「またそれかよっ!」
怪しく笑いながら紡ぐ言葉にひんやりと背中に汗を掻いたが、最後の言葉で台無しである。今度は我慢できずに突っ込んでしまった。
「人間がそうやって文化を取り入れていってるからそうなるのよ。日本に住む鬼なんて、妖怪なんて、信じられずに消えていったのを私、知ってるわ。私たちは役目を失っていくのよ、どんどんどんどん。だから、代わりを見つけて生きていかなきゃいけないの。」
けれど、魔女は冷たい視線を外さない。わからないでしょ?と言いたげだ。
正直、感情でモノを言われても、俺にはよくわからなかった。なんとなく、彼女の目が悲しみの色を持っていることだけはわかったけれど。
「……よくわからないが、いきなり来て連れてこられてはいそうですか。って納得はできない。本当に帰る道はないのか?」
俺も目を眇めて彼女を睨みつける。ちなみに鬼のほっぺはつねりっぱなっしで、さっきから、あっとかうっっとか泣き声が聞こえてくるが無視だ。
「地獄に出口なんか……あると思う?」
「…………。」
「なんて、いいわ。トラのほっぺ離してくれるなら、私が知ってることだけ話すわ。」
挑発に思わず怒りがこみ上げて抓っていた力に手が入ったのだろう、トラが泣き出した。見かねた魔女が肩を竦めて条件を出してくる。慌てて俺は彼のほっぺたから手を離した。
鬼はすぐさま魔女の後ろへと隠れた。
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