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「なぁ、お前。死にたいか?」
冷酷。
誰にも表情を崩すことのない人の皮を被った悪魔だ、と。
無慈悲。
女、子供相手にも容赦なくただ淡々と任務をこなす機械のような奴だ、と。
残虐。
なんの躊躇いもなく首を掻っ切り、脳天をぶち抜く。まるでモノであるかの様に人を壊す殺人鬼だ、と。
望まずともその名を欲しいままにし、最凶の執行者とまで言われてきた自分が、あの静まり返った赤の村で、なんでそんなことを言ったのか。今となっては覚えていない。
でも、なんでかと聞かれたら、それは。
きっとただの気紛れだったのだろう。
***
「なぁ、お前。死にたいか?」
生きたいか? とは聞かなかった。
目の前で茫然と座り込んでいる幼い少女に俺は問いかける。
どす黒い赤に染まった赤銅の髪をピクリとも動かずに相変わらず床を見つめる少女につまらん、と思いながら銃口を向ける。
「じゃあな」
引き金に指がかかる。
虚ろな目の少女は首をかすかに振った。
ボーっと床を、いや赤い液体で汚れた死体を見ていた少女はゆっくりと顔を上げ少年を未だ虚ろだが綺麗な榛色のガラス玉で真っ直ぐ見つめる。
「……、たい」
微かに少女が言葉を発するのが聞こえた。
「そうか……」
それだけ言って銃を下ろした。
少女はただ俺の行動を一挙一動逃さず見つめていた。
もう用はないとばかりに少女に背を向け戸口へと向かう。
男が見えなくなる刹那、幼い少女は駆け出す。
そして……
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