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紫音さんだ
美沙子さんは僕と紫音さんを交互にみる
「あなたに話しかけてるのよ」
紫音さんは美沙子さんを指さす
戸惑う美沙子さん
それもそのはず
美沙子さんにとって
自分を認識できる人間は僕だけだったのだから
「三田くん、あのコ知ってる?」
「うん、紫音さんっていうんだけど…僕も詳しいことは分からない」
紫音さんは僕たちとの距離を保ちながら話を続ける
「わたしは釘宮紫音(くぎみやしおん)。あなたの目的を教えてもらおうかしら」
「目的?わたしには目的なんか…」
記憶もなにも無いんだ
美沙子さんはなにも目的すら分からない
「嘘よ!あなた霊ってものがどんなものか知ってるの?何故死んでもなお、この世にとどまり続ける意味がある?それは、そこに"目的"があるから」
「でもほんとにわからないの…」
美沙子さんの目が心なしか潤んできているようにみえる
「騙されないで三田くん。こいつらは人間の恐怖や同情につけこんで自分たちの目的や復讐を果たす。この世に未練や憎悪があればあるほどよりリアルな実体として生きている人間と接触ができる。」
その瞬間紫音さんがなにを言いたいのかわかった
だけどそれでもそれを受け入れない自分がいた
「三田くんも目をさまして、あなたの隣にいるのはだれ?見た目美しい女子高生?それとも恐ろしい悪霊?」
僕は美沙子さんを見れなかった
美沙子さんを悪霊として見たくなかった
美沙子さんのままで…
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