食殺考察語り

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 「妹が食われたんです。命は奪われませんでしたが、私の目の前で体の一部を食われたんです。血が沢山出てました。沢山泣いてました。おぞましい光景でした。頭の中がぐわんぐわんしてぐっちゃぐちゃに掻き回されたような感覚がしました。私も怖くて泣きました。体が言うことを聞きませんでした。しかし恐ろしい感覚しか支配していなかったあの空間で、私は頭の隅で“牛や鳥や魚を食べている私達ってまさしくこうなんじゃないか”と思いました。動物達にとってはこんなの日常茶飯事で、むしろこうでなくちゃ成り立たないのに動物であるはずの人間は明日にも食われるということはありません。何故でしょうか? 奪ったり裏切られたりある意味では明日にも食われそうですが。人間にも肉体的な意味で、命を食われるということがあるはずなのに、何故でしょう? 動物達の食いあいは淡々と進んでいくのに何故人間は醜悪で歪んでいるんでしょう? もちろん、動物達も食われる際、恐怖を感じないことはないと思っています。言葉が交わせないだけなんです。しかし何故人と彼らは違うのですか? 命を繋いでいく、いわば食い愛の彼らに対して、どうしてこうも歪んでいるのですか? 愛を持ってるはずなのに、ねじまがっている気がするんです。そこまで思って私は妹を食った奴を食いました。でもやっぱり恐ろしくて全部は無理でした。命を奪わないでよかったです。この結果に安堵しています。
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