屋上の警察署

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県立三山高等学校。 どこの学校にも、どこから噂されたのか何の根拠もない七不思議と呼ばれる迷信が存在する。 この三山高校も同様に七つとは言わないが、ある噂があった。 この学校の創立六十年目の午後6時6分ジャストに屋上の貯水槽の裏に手をつき、 「サトウロウ様お目覚め下さい。」 と言うと異次元に連れて行かれる。 といったものだ。 そんなバカバカしい噂、囁かれ始めた当初はずいぶん話題になったものの、今では覚えている者も少ない。 そんな今日は三山高校の創立六十年目の日であった。 屋上へ続く階段を登る女生徒が一人。 名前は高村真奈(たかむら まな)。 肩に触れるか触れないかのつややかな黒髪を揺らしながら一段一段、時計を見ながら登っていく。 時刻は午後6時5分。 高村真奈は屋上の貯水槽の裏に手をつき、時計の秒針を目で追う。 57秒…58秒… 59秒… 高村真奈は大きく息を吸う。 午後6時6分ジャスト! 「サトウロウ様お目覚め下さぁ――――い!!!!!!」 午後6時9分。 何も起きない。 「そりゃそうだよ… 何やってんだろ私は…」 高村真奈は肩をすくめてその場を去ろうとした時、 「え?」 貯水槽から腕が伸びていて、高村真奈の右手首をしっかり握っていた。 「うぎゃあぁっ!!」 そして高村真奈は貯水槽の中へと引きずり込まれていった。
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