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「何だよ。なにニヤケてやがる」
「…あなたが僕のことを心配してくれるとは思わなかったものですから、つい嬉しくて」
「なっ!?…だ、誰も心配なんかしてないっ。誰がすきこのんでおまえの心配なんかするかっ」
「そうなんですか?」
「そうだっ!俺はただ見たまでのこと、そのままを口にしただけだ。勘違いするなっ」
「では、そういうことにしておきます………ふふっ」
「笑うなっ」
語気を荒げて必死に否定する彼の姿に、「笑うな」と叱られてもあふれてしまう。
以前の自分なら信じられないこと。
眉間あたりに蟠っていた夢の残滓は、彼の態度ひとつでもはや跡形もなく消えていた。
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