栄咲佑滋の日記より

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 今日は一ヶ月ぶりのライブの日だった。  まず、和真のバカ兄貴がパチンコから帰ってこず、瞳と双海は行方不明、心結は洗濯物を入れるのを忘れたと一旦帰宅。  何とも言い難い団結力のなさが目立つサカザキロックの面々である。  かくいう俺は、唯一の常識人として、一時間前にはライブハウスに入ったし、スタッフや他の出演者の方に挨拶も忘れない。まあ、女を連れこんでイチャイチャかましていたバンドには、もれなく舌打ちを決めてやったが。  だいたいバンドをファッションだとでも思ってるんじゃねぇか?それに、あんな男達になびく女もおかしい。何がおかしいって、あんなモヤシ野郎より俺のほうが何倍も……。  いや、やめよう。惨めな気分になるだけだ。  結局、リハーサル寸前に双海が来て、二人でリハーサルをこなす。スタッフには、急な都合で、ドラムとギターだけのバンドになりましたと説明したら、笑っていた。笑うとこか?そこ。  逆に俺が首を傾げるとスタッフは言った。 『君たちが時間を守らないことは知ってる。本当ならそんな常識知らずのバンドを出すわけにはいかないんだけど』  うっ、と目を背ける俺と双海。このパターンだけで、何度ライブ出来なかったことか。 『瞳ちゃんには借りがあるしねぇ。さっき電話したら皆来るって言ってたから。今日は特別だ』  怒る素振りを微塵も見せずに、スタッフは笑い飛ばした。
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