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いつも明るくて、元気で、無邪気にはしゃいでいた翔に、そんな過去があったなんて・・・ 「親戚の家に引き取られたんですけど、全然馴染めなくて。ずっとシロ・・・あっ、シロって猫の名前なんですけど、シロと遊んでたんです。学校では虐められてたから友達もいなくて。だから、シロが唯一の友達だった。」 「・・・・・・」 俺は何も言えなかった。 俺なんかが口を出したらいけないような気がして・・・ そんな俺に気付いた翔が、少し明るい声を出した。 「でもね、中学に入って、センパイに出会ったんです。」 「・・・俺?」 「はい。オレ、さすがにこのままじゃダメだって思って、野球を始めたんです。で、うちの学校に練習試合に来ていたセンパイを見つけた。最初から最後まで目が離せなかった。真剣にやってるのに、すげぇ楽しそうで。オレもあんな風になりたいって思った。一緒に野球したいって思った。」 初めて聞く、俺に対する翔の想いに顔が熱くなる。 「センパイと同じ高校に行きたくて、必死で練習して、勉強も頑張って。一生懸命やってたら、自然と友達も増えてった。だからね・・・」 翔が俺の顔を覗き込む。 「センパイのおかげなんです。」 「俺は何も・・・」 戸惑う俺に、翔はニッコリと微笑みながら言葉を続ける。 「この高校に来て、毎日のようにセンパイと一緒に野球して、一緒に居させてもらって。楽しい時間を過ごさせてもらえた。だから、俺はもう大丈夫だって思ってたんです。・・・けど・・・やっぱりツライっすね。」 そう言った翔は笑っていた。 でも・・・・・・ 「セン・・・パイ?」 俺は翔を抱きしめた。 今にも壊れそうなその身体を、そっと包み込むように。 「泣きたい時は泣けば良い。我慢なんかするな。」 「・・・ッ・・・ック・・・徹センパイ・・・・」 (あぁ、そっか。そう言う事か) 俺の腕の中で、俺の名前を呼びながら泣きじゃくる翔を抱きしめ、心の中に浮かんだ気持ちの意味にようやく気が付いた。
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