たった二人の特捜本部

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大きなストライプの濃紺のスーツ、タイも派手目なものを選んだ。手には上質なカウレザーのアタッシュケース、 これ全て、学園に潜んで居るであろうホシへのデモンストレーションだ。 無数の視線を意識しながら職員室へ、逆にこちらも観察の目を向けてやる。 女子は萌木色のセーラー、ライトタンのスカート、白いハイソックス、男子は女子と同色のシャツとスラックス。 高等部はこれの上下が逆転するようだ。 まるで軍服のようだ。と壬生は思った。 職員室では教頭が出迎えた。 柔和そうな紳士は丁寧な労いの言葉のあと、生活指導担当の教師を呼んだ。 現れたのは、壬生と同年代の男性教師。 短髪、日焼け肌、厚い胸板、几帳面にアイロンの当たったシャツ、パンツ。 口元には爽やかな微笑み、 「生活指導を担当しております、黒田と申します。詳しい話しは私が承ります。」 括舌もいい。 その後、校内でのチラシ配布の打合せは、教頭を交え、生活指導室なる場所で行われることになった。 校舎と講堂の間にあるその部屋はコピーやパソコン、デスクに応接セットまで備えた立派なもので、壬生が持っていた「生活指導室」のイメージとは大きくかけ離れていた。
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