たった二人の特捜本部

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壬生のいた高校にも、同様の部屋はあった。 ただし、備品と言えば折りたたみテーブルとパイプ椅子、生徒をしばく為の竹刀、電気コード・・・。 尻が痒くなる違和感を覚えながらチラシの意図について説明する。 その間、黒田は前傾姿勢で熱心に聞き、教頭は時々腕時計を見ながらやたらに時間を気にしている。 「わかりました。当校も微力ながら協力させて頂きましょう」 壬生の説明が終わった途端、教頭はそう言い出し、黒田に校内での配布時期を早々に決めるよう命じ、慌てて席を立った。 「忙しい人ですから、教頭は」 と黒田はまた白い歯を見せ笑う。 その後はひたすら世間話になった。 特に近頃の少年犯罪の話になると黒田は熱弁を奮った。 「厳罰だけが答えでは無いですよ、何故彼ら彼女らが罪を犯したのか、それを掘り下げなければ、問題の解決には成りません」 至極最もな意見、確かに正論。 「刑事さんはどう思われます?」 質問を向けられた。 壬生はこともなく答えた。 「捜査する者としては、動機は重要です。しかしそれが少年犯罪の減少に繋るかは、興味は在りません、私の仕事は事件を解決すること、減らすことは役人が考えたらええことや思いますけど」
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