たった二人の特捜本部

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「壬生さん、宜しいですか?」 黒田の求めを素直に了解する。 入ってきた少年は、壬生を認めるとスポーツ苅りの頭を深々と下げて黙礼。 軍服まがいの制服と、立派なガタイのおかげで戦前の青年将校にみえた。 用件は部活に関することらしく、お互いに要領をえた的確な問いと返答を交わし、終ると三木は来た時と同じ、爽やかな礼を残して部屋を去った。 「礼儀がよう身についてますなぁ」 心にも無い世辞が口から出る。 無論、腹の中は違和感でいっぱいだ。 行儀の悪い餓鬼も嫌いだが良すぎる餓鬼は気持ち悪い。 「剣道部で礼儀作法は鍛えてますからね、けど人とあたりの良さは彼が『なかまのかい』メンバーだからでしょう」 「『なかまのかい』?」 偽善臭い名称が壬生の耳をくすぐる。 「言うなれば本学園内に置けるボランティア団体と申しましょうか、障害を持つ生徒のサポートや、生徒関のトラブルの解決を支援したりしています。みんな正義感や博愛精神に満ちた、良い生徒ばかりです。私も顧問みたいな事をしていますが、いゃ、頭が下がります。」 つまり、お節介焼きの集団と言う訳だ。 壬生はそう結論付けた。
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