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紫苑が住むマンションの地下駐車場にランクルを停めた壬生は、周りの車を見て、改めてここに住む人種の質を認識した。
ざっと見ただけでも500万以下の車は一台も見えない。
来客用でこれなのだから、入居者用は想像するまでもない。
署のプラッツに乗って来なかったのは正解だと確信した。
エレベーターで一階へ、ドアが開いて目に飛び込んだのはシティホテルのロビーの様なエントランスと深い緑色のスーツに身を包んだ若い女性。
胸のプレートには「コンシュルジュ」とある。最近は「管理人さん」とは呼ばないらしい、「めぞん一刻」が懐かしい。
作法と警戒心が確り身についた彼女に紫苑の部屋を呼び出して貰う。
モニターに姿を見せた彼女は毎度の邪魔臭そうな態度で、
「上がって来て」
と一言言い放ちインターホンを切った。
コンシュルジュの疑いの視線を背中に受けエレベーターに乗る。
高速エレベーターのGに身をまかせ目的階に到着、一つのフロアーに部屋は六つしかないので迷う事は無い。
インターホンを押すと、
「どうぞ」
との声、
玄関に入るとまず出迎えたのは巨大な肖像画だった。
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