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急行停車駅近くにある築二十年以上のボロアパートを、刑事達が取り囲んだのは、午前十時頃のことだった。
二階の端にある容疑者の部屋を中心に、アパートの裏に二人、前の路地に二人、そして玄関に四人、さらにほど近くにあるコンビニの駐車場には、前線基地代わりステップワゴンが置かれ、そこにも責任者である南河内署刑事課凶行犯係長を筆頭に三人が乗り込んでいた。
壬生宗治(ミブソウジ)は玄関前でガムを噛みながら、目のまえで緊張で体をこわばらせる二十代半ばの巡査長を眺めていた。
ドアチェーンを切るクリッパーを指先が真っ白になるほど強く握り絞めているその姿に壬生はなんとか笑いを堪える。
今ドアの向こうに居るのは、危険極まり無い凶悪犯などではない、小学生の女の子しかレイプ出来ない、ぺェドフォリアの貧弱な変態だ。
それなのに、この若造は緊張しまくって、汗だくになっている。もし、自分が府警本部捜査一課時代にパクった、シャブ中のヤクザなんかと対決させたらどうだろうか・・・・・・。
そんな意地の悪い想像をしながら、壬生は係長からのゴーサインを待っていた。
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