851人が本棚に入れています
本棚に追加
容疑者の名前は新居庄司(アライショウジ)
南河内市内にある三流私立大学の四回生。
高校生時代に幼女に対する強制わいせつで補導された前があり、その時採取された指紋と、今回の事件で被害者のランドセルから見つかった物と一致し、逮捕状が発行された。
今まで綺麗に証拠を残さず犯行を重ねて来たが、悪運も尽きたと言うわけだ。
この決定打となったランドセルの入手に成功したのは壬生だった。
被害者の供述から新居が素手で触ったことに気付き、親が処分する寸前で手にいれたのだ。
だから、壬生に取って新居は自分の獲物だと言う認識があった。
同僚の横取りは無論許さないが、担当の検事がいい加減な事件処理をするのも看過できない。
ほかの刑事達がする噂話によると、今回の担当検事は性犯罪にかなり甘いらしい。
量刑の重さ=事件の値打ちだとすれば、それなりの重罰でなければ自分の獲物にハクがつかない。
そんな計算を巡らせている時、壬生の無線機がなった。
「新居の奴、間違いのう中に居るな?」
係長の声がイアホーンを鳴らす。
「ハイ」
壬生の簡潔な返答に係長は間髪入れず命じた。
「よっしゃ、着手や!」
最初のコメントを投稿しよう!