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それから私は、隙を見つけては教会に行き、神父様に会える日には毎日一節ずつ讃美歌を教えてもらいに通った。
原罪の果実はとても甘い。罪深いことに、私はすっかり神父様に恋をしてしまっていたのだ。
「ミレーユ、最近教会に通い詰めね」
ある日ソニアがそう言った。
「あ、うん。色々教えて貰ってるの」
「ふぅん、それで最近元気なのね」
私は心中を見透かされたようでどきりとしてしまう。
確かに、神父様に出会ってからの私は、どこか心に余裕が生まれていた。むしろ、満たされていたと言った方が正しかった。
「さすが、王宮教会の神父様は違うって感じね」
「王宮教会…?」
きょとんとする私に、知らなかったの?とソニアが説明してくれる。
「あの神父様、王宮教会から派遣されてるのよ。
今、高等部で特別に講義して下さってて、やっぱり凄い人気みたい」
あの見た目だものね、とソニアが感嘆のため息をつく。
「知らなかった…」
ずっと、学校の神父様だと思っていた。本当はずっと遠い、手の届かない場所にいる人なんだと知ると、何だか自分が図々しく感じられてしまう。
そして、図々しくと分かっていながらも、思ってしまった。
「いつかは、戻られてしまうの…」
呟いた言葉は風にかき消された。
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