第一の扉 ―色欲―

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私は自らの無知を嘆いた。 私が少しでもこの本を読むことが出来ていたならば、こんなことにはならなかった。 いや、神父様に恋焦がれなければ、こんな事は起こらなかったのかも知れない。 後悔してもあまりに遅く、それからの出来事は瞬く間、足掻く隙もなく、私を突き落とした。 教会から学校に、私のことが知らされたらしい。私は、邪教徒として扱われ、やがて退学へと追い込まれた。 夢は絶たれた。あまりに申し訳なくて、村に帰ることも出来ない。 それでも、村のみんなが支払ってくれた学費だけは自分で返さなくては、と思った。 それから私は、働ける仕事ならどんなことだって、身体が動く限り働いた。 それでも、稼げるお金はほんの一握りで。だからそれはきっと必然の選択だった。 ―間もなくして私は、娼館へと身を落とした… 賎しい身ながら、私は思う。 それでも、あの恋心を後悔したりはしない。 教会での日々は、眩く幸せだったから。 私は燃えかけの本だけを抱いて、色欲の罪に墜ちていった―
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