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ある日、神父が教会の扉を開けると、そこはいつもの教会ではなく、見慣れぬ聖堂だった。
厳かな雰囲気の礼拝堂。
見上げるほど高い天井、ステンドグラスからは目を覆うほどの光が煌々と差していた。
そして、本来十字が祀られているはずの場所には、大きな逆十字の象徴が在った。
「ようこそ敬虔なる神父様、告悔の教会へ」
教会に男の声が響く。
見れば逆光の中、男が祭壇に腰掛けていた。
銀髪に純白の法衣を纏い、逆十字の影を背負う男の姿は、さもすれば十字を背負う天使のようにも見えた。
「この身は神に仕える身に非ず」
男は神父の心を見透かしたかのように笑ってみせた。
「ここは何処ですか?
貴方が神の御遣いではないと言うならば、何故私をここへ導いたのですか」
神父は問う。神の啓示ではないならば、何故自分はこのような場所にいるのか。
「神の御遣いに非ずとも、私達は貴方がいかに敬虔なお方で在るかを知っている。
どうか、帰る前に哀れな私達の告悔を聞いて欲しい」
男の言葉に神父が辺りを見回すと、そこには六つの扉と、仮面で顔を覆った数人の人々がいた。
神父は敬虔であるが故に思う。これも神が自らに与えた試練かも知れない、と。
それにこれが夢であれ、告悔を乞う者を見捨てることは出来ない。
「分かりました、私で良ければその罪を聞きましょう」
神父の言葉に、男はニヤリと口元をつり上げた。
「神父様に感謝を!」
男は、祭壇から腰を下ろすと、仰々しく天を仰いだ。
「此処は告悔の教会!
赦されざる罪を背負う者の堕ちる場所。
彼らを赦せし罪の逆十字に裁きを」
男の声が高らかに天を突き抜け、どこからか歪な鐘の音が響き、反響は讃美歌のように教会に響きわたった。
「お好きな扉から、お開き下さい…」
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