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ある日、僕は貧民街の近くへと出向いた。もしかすると都市外周部になら自分を雇ってくれる場所があるかもしれないと思った。
僕たちが捨てられていた場所。一体どんな場所なんだろう、少し興味もあった。
でも、僕がそこで見たのは予想外の光景だった。
最初に目を引いたのは、孤児院にいるような子供だった。
しかし、着ているものは汚らしい布切れで、その子供自身も汚れきっていた。
でも、それ以上に僕の心を突いたのは、野生の動物のような、警戒と怯えたような感情を湛えたその瞳だった。
貧民街にいる子供はみな、ギラギラとした瞳か、全てを諦めた抜け殻のような瞳をしている。
僕も、拾われていなかったらこんな風になっていたのだろうか。そう考えると背筋に冷たいモノが流れた。
僕は怖くなって、逃げるように走り去った。
その日僕は、孤児院の食事が喉を通らなかった。
孤児院だって全ての子供を養うことが出来る訳じゃない。
だけど、偶然にも助かった自分だけが、こうして安心した寝食の場所を得ていることが、何だか罪な気がしてならなかった。
「ティト、どうしたの?」
ミリィの問いに、僕は曖昧な笑顔で大丈夫、と答えることしか出来なかった。
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