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その夜、やっぱり僕は眠れなかった。
暖かなベッドに横たわって、昼間の貧民街のことを考えていた。
あの子ども達は今どうして寝ているのだろうか。
「ティト!」
「ぅわっ!」
そんな僕のところに、ミリィがひょこっと顔を出す。
「何だか今日、変だよ?」
「うん…」
「話して?」
ミリィは微笑む。また僕はミリィに励まされている。
僕は、ぽつりぽつりと、自然に今日あった出来事を話していた。
「ふぅん」
ミリィは少しだけ考えたような表情を浮かべた後、にこっと笑ってみせた。
「ティトの思った通りに、すればいいよ」
それだけ言うと、おやすみー、と自分のベッドに潜っていった。
僕は考える。僕がしたいことは何だろう。
そして、翌日、僕は自分の食事のパンをこっそり隠し持って、貧民街に向かった。
子ども達の飢えた獣のような瞳が突き刺さる。
「こ、これ…っ!」
僕はおずおずとパンを差し出す。
子ども達は、どんな反応をするのだろう。
心に決めていたことなのに、急に自信がなくなる。
偽善者だと罵られるだろうか。僕の行動は所詮は自己満足で終わるのかもしれない。
そんなことを考えていたら、僕の袖を引く少年がいた。
「…それ、食べて…いいのか?」
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