第二の扉 ―暴食―

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僕は貧民街の、子供達の集まっている場所に連れてこられた。 子供達は予想以上に僕に懐いてくれた。笑っている姿を見ると、孤児院の子供達と何も変わらなくて、心が痛んだ。 子供達は僕の持ってきた一つのパンを何人もで分け合っていた。一人分は小さな欠片にしかならない。 それを頬張る子供達を僕はただ見ていた。 「あれ、君は?」 その一欠片を、食べずに持っているだけの少年がいた。 その少年だけは笑っていなくて、目つきも険しいままだった。 「…俺は、食わない」 そう言って走り出した少年の後を、僕は追いかけた。 その先には、ボロボロのベッドに寝ている、小さな女の子がいた。 「クレア、いもうとだ」 少年が言った。 「えーよーしっちょーだって」 後からついてきた子供達の誰かが説明してくれた。 少年たちは元々は家族で貧民街に住んでいたらしい。でもある日、両親は流行病で死んでしまった。 少年と、栄養失調で弱っている妹を残して。 「ほら、パンだ!あのにーちゃんが持ってきてくれた!」 少年は必死で妹にパンを食べさせる。 不意に、妹…クレアが僕の方を見た。 「ありがとう!」 そう言って満面の笑顔を浮かべるクレア。 その姿がミリィと重なって、僕は、どうしようもない感情に駆られた。 少し立場が違えば、この兄妹は僕たちだったかもしれないのだ。 その日帰ると、ミリィは変わらない笑顔で迎えてくれて。 僕は、泣いてしまった。
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